
運用の必要性①
今更ですが「固定金利ではお金は増えません」という話は多くの方が聞いたことがあるし、知っています。
でも私たち日本人は、固定金利の金融商品を選んで貯金しています。
なぜでしょうか?
銀行預金のような固定金利の金融商品に預けておけば「安心」だと考えているからでしょう。でも、これは本当ですか?
今から30年程前の1990年頃に金利は年6~7%程度ありましたので「郵便局に預けていたら10年で倍になった」という話をよく聞きました。
今はどうでしょうか?都市銀行の定期預金の金利は年0.01%です。
①金利6.0% 毎月1万円を複利で20年間積立てる場合
②金利0.1% 毎月1万円を複利で20年間積立てる場合 で比べましょう。
①の場合は、20年後の元本240万円、税引き前の元利合計額455.6万円
②の場合は、20年後の元本240万円、税引き前の元利合計額240.2万円
今の金利では、お金は増えませんね。将来のためにお金を積立てていこうと考えるなら、高い金利の金融商品を選ぶ必要がありますが、現実にはそのような固定金利で高い金利の金融商品はありませんから、運用して20年間の平均利回りを高くなるようにすることが必要です。
日本には個人金融資産が1800兆円あるという報道が時折あり、いかにも私たち日本人がお金持ちのように扱われます。これは正しいのでしょうか?
1990年当時の日本の個人金融資産は994兆円でした。これが2017年には1.87倍の1854兆円に増えています。
どうでしょうか、「こんなに増えた」と考えますか?それとも「たったこれだけしか増えていない」と考えますか?
1990年から2017年まで27年経過して、1.87倍では少ないですね。
米国のケースを見てみます。1990年の個人金融資産は1070兆円、2017年は8987兆円(8.4倍)に増えています。増えた要因として、401K法案などの施行で積立投資(投資信託による運用)が一般的になったことです。
米国で1990年の投資信託の残高は106兆円でした。これが2017年には2438兆円(22.9倍)になっています。日本では1990年の投資信託残高は46兆円、2017年は205兆円(4.5倍)です。
米国とは人口が違いますが、米国並みに積立投資信託で運用していたとしたら、2017年の投資信託残高は1000兆円になっていた可能性があります。205兆円が1000兆円になっていれば、個人金融資産も増えていることになります。
つまり日本人は銀行預金等の固定金利を中心にお金を預けてきた為に、数百兆円規模の収益を取り逃がしてきたと言えます。
次に社会保障制度の面からも考えてみます。よく言われていることですが、日本では、これから高齢化が進んでいきます。これは国が支出する社会保障費の負担が増えていくということです。
社会保障費は
1960年: 1.6兆円
1985年:35.7兆円
2005年:87.8兆円
2016年:111兆円 でした。
高齢化の進展とともに負担額が増えてきましたが、今後は
2025年(予想):167兆円
2040年(予想):190兆円 になると予測されています。
現在も徴収している社会保険料だけでは足りずに、税金で補填されています。
2016年の社会保障費111兆円の内訳は、税金:45兆円、社会保険料:66兆円です。
今後の社会保障制度は、社会保障費が増えていくことを考えると、私たちが支払う社会保険料が増加して、年金の給付水準が減っていく方向に進むと見込まれます。
税金(消費税)で補うという考えもありますが、将来増えていく負担分を全額消費税で補うと仮定すると、消費税率は24~30%程度が必要となります。なかなか厳しい数字になります。
将来の退職後の生活を考えると、退職した後に「お金が足りなくなる」ことが想定されます。公的年金の支給額が減ることが予想されるのであれば、不足する分を自分で準備しなければなりませんが、固定金利ではお金は増えませんので運用して高い利回りを求めることが必要です。
次回は運用の必要性②です。